家康くん日記

そなたは知っていたかな？
鍵盤ハーモニカをつくる最終検査には　機械よりも人間の手が一番だったんじゃ。
鍵盤ハーモニカ特集は　今日が最後じゃ。

●最終検査はやはり人間の手で。絶対音感を持つ唯一無二のスペシャリストが全ての製品を確認

　このように入念に作られた“リード”のプレートに、鍵盤やカバーが取り付けられます。そして、組みたてが終わったメロディオンはすべて人の手によって最終検査をされます。
　実は、最終検査をするのは、鈴木富士夫さん（51歳）ただ一人。なぜなら、この最終検査の工程は絶対音感を持つスペシャリストでなければならず、鈴木楽器製作所でそれが可能な職人は鈴木富士夫さんのみなのです。鈴木富士夫さんは30年間に渡り、毎日毎日1500本ものメロディオンを実際に弾き、耳で確認してきました。一本のメロディオンにかける時間はわずか数秒。サッとひと吹きしただけで、わずかな狂いを聴き分けられるのだそうです。鈴木富士夫さんの正確な耳により「不合格」とされたメロディオンは、解体され、“リード”の削り直しの工程に戻されます。

　　　　　　　　　　　　　　
　同社の仲村圭司総務部長は、「鈴木富士夫のような、唯一無二のスキルを持つ職人を育てるというのが弊社の一番の課題です。長年培った技術には、どんな最新の機械もかなわないのです。技術を受け継げなければ、クオリティの高い楽器製作は成り立たない。新しい可能性を模索しつつも、卓越した技術者を育成することが急務となっています」と語ります。


●部品をつくる機械もすべて自社で。純国産にこだわり、“メイド・イン・浜松”のものづくり技術を継承

　鈴木楽器製作所では、ハーモニカや鍵盤ハーモニカの他にも、オルガンやリコーダー等の教育楽器や、世界中のプロ・キーボード奏者に広く愛用されている「ハモンド（HAMMOND）」ブランドのオルガンやキーボードなど、多岐にわたる楽器を製造しています。
　日本から数多くの楽器メーカーが消え、現存するメーカーも安く労働力を確保できる海外に次々と工場を移していくなか、鈴木楽器製作所はあくまでも“純国産”にこだわり、部品を作る機械からすべて自社で開発しています。
　今はこういった楽器工場がほとんど無くなってしまったため、小学校からの社会科見学の申し込みが絶えず、毎年3000～4000名の小学生が同社を訪れます。身近な楽器である鍵盤ハーモニカが、自分たちの地元である浜松で作られていることに、子どもたちは目をキラキラさせて見入るそうです。


　
　また鈴木楽器製作所では、“すべて手作りだからこそできるサービス”を考え、障がいを持つ子どものためのオーダーメイド楽器の製作も手掛けています。手に障がいがあり鍵盤を弾くことができない子どもの手型等を親御さんに郵送してもらい、個々に合うように何ヶ月も工夫して丁寧に楽器を製作します。そして、ようやく完成した“世界でひとつの楽器”を受け取った子どもたちや親御さんたちは大喜びし、とても大切に楽器を使うそうです。同社にはこれまでに子どもたちからの感謝の手紙がたくさん届きました。
　
　仲村総務部長は、「創業者の鈴木萬司をはじめとした全従業員は、こういった“よろこびの声”を何よりの励みにしてきました。鈴木萬司は、90歳になった現在も現役会長で、毎日工場を訪れ、従業員と楽器作りのアイデアについて生き生きと話し合っています。弊社は今年、創立60周年を迎えます。何十年もここ浜松で培っていた技術があるからこそ、美しく繊細な“魅力ある音色”を持つ楽器を作ることができるのです。これからも浜松で、先人たちの築いた技術を受け継ぎながら、浜松だからこそできる“ものづくり”を継承していきたいです」と語ります。


おわり